実数の離散時間信号の離散フーリエ変換による複素スペクトル\(X[k]\)の実部は、\(X[k]\)の要素数が\(N\)の場合、\(1\leq k < N\)の範囲で\(k=\displaystyle\frac{N}{2}\)を対称軸とした線対称になります。
例えば、以下は、\(N=16\)(偶数)のときの\(X[k]\)の実部です。
例えば、以下は、\(N=17\)(奇数)のときの\(X[k]\)の実部です。
\(X[k]\)の虚部は、\(X[k]\)の要素数が\(N\)の場合、\(1\leq k < N\)の範囲で\(k=\displaystyle\frac{N}{2}\)を中心とした点対称になります。
例えば、以下は、\(N=16\)(偶数)のときの\(X[k]\)の虚部です。
例えば、以下は、\(N=17\)(奇数)のときの\(X[k]\)の虚部です。
つまり、\(1\leq k < N\)の条件で、\(X[N-k]\)は、\(X[k]\)の共役複素数です。
\[\overline{X[k]}=X[N-k]\]
なお、複素数の離散時間信号の離散フーリエ変換の場合は、上記の対称性は現れません。
まず、離散フーリエ変換の式を準備します。
\[X[k] = \sum_{n=0}^{N-1} x[n] e^{-i2\pi\frac{k}{N}n}\]
\(x[n]\)が実数の離散時間信号であれば、\(X[k]\)の共役複素数は、以下になります。
\[\overline{X[k]} = \sum_{n=0}^{N-1} x[n] e^{i2\pi\frac{k}{N}n}\]
一方で、\(X[k]\)を\(X[N-k]\)とすると、以下になります。
\[X[N-k] = \sum_{n=0}^{N-1} x[n] e^{-i2\pi\frac{N-k}{N}n}\]
以下のように変形します。
\[= \sum_{n=0}^{N-1} x[n] e^{-i2\pi\left (1-\frac{k}{N} \right )n}\]
指数法則を使って、以下のように変形します。
\[= \sum_{n=0}^{N-1} x[n] e^{-i2\pi n}e^{i2\pi \frac{k}{N} n}\]
\(e^{-i2\pi n}\)は、オイラーの公式より、常に1です。
\[= \sum_{n=0}^{N-1} x[n] e^{i2\pi \frac{k}{N} n}\]
よって、\(1\leq k < N\)の条件で、\(\overline{X[k]}=X[N-k]\)が成り立つことが証明できました。